中国の対日強硬論、ぶり返す可能性も 首相靖国参拝(ASAHI)

2005年10月17日13時23分

 戦後60年の今年、中国政府は小泉首相靖国参拝に例年以上に神経をとがらせてきた。春に北京や上海などで大規模な反日デモが起きたことを受け、国民の反日感情が社会不安につながることを恐れた面もある。有人宇宙船「神舟6号」の成功で高揚した国民感情が今回の靖国参拝にどのような反応を示すかは予測できず、中国政府自身も今後、対応に苦慮する場面が避けられそうにない。

 中国国営の新華社通信は、英文記事で「第2次世界大戦の戦犯らがまつられている靖国神社に日本の小泉純一郎首相は参拝した」と速報した。参拝形式が従来より簡略化したことには触れなかった。一方、華僑向け通信社・中国新聞社は「必ず中朝韓などアジアにおける日本の隣国の怒りを買うだろう」と報じた。

 李肇星(リー・チャオシン)外相は15日、中国を訪問中の谷内正太郎外務次官に「両国政府には中日関係を改善する責任がある」と述べ、対日関係の修復に意欲を見せていた。しかし、一方で翌16日には、戴秉国・筆頭外務次官が谷内次官との間で予定していた総合政策対話の2日目の協議を行わないという不可解な動きもあった。

 中国側は今夏、小泉首相終戦記念日靖国神社を参拝することを強く警戒。それが見送られた後の9月3日、胡錦涛(フー・チンタオ)国家主席が中国の戦勝60周年を祝う記念式典で、日中両国を「アジアと世界で重要な影響力を持つ国」と呼び、日本の指導者に「未来に責任ある態度を」と求めた。対日関係改善への意欲を示すとともに、年末に向けた参拝を牽制(けんせい)する狙いがあった。さらに、秋の例大祭での参拝を警戒し、日本関係者にはたらきかけを強めていた。

 しかし、結果として小泉首相が参拝に踏み切ったことで、対日強硬論がぶり返す可能性もある。