「北朝鮮崩壊で中国に吸収」 米元特使講演に韓国与党ビックリ

 【ソウル=久保田るり子】米ブッシュ政権朝鮮半島平和担当特使を務めたブルッキングス研究所のチャールズ・プリチャード客員研究員が訪韓し、与党ウリ党シンクタンクでの講演で「北朝鮮は一瞬のうちに崩壊し二つのコリアではなく中国に吸収される可能性が高い」など“北朝鮮崩壊論”を展開し、南北融和を掲げる与党をあわてさせた。おりしも南北関係が年初から雲行きがおかしく、韓国政府は対北問題にいつになく神経質になっている。
 プリチャード氏は、政策研究院で講演したなかで、「(北朝鮮にある)開城工業団地関連の電力供給や鉄路、道路建設など、平壌に利益をもたらす韓国の政策にブッシュ政権が今後、制限を加える可能性がある」と指摘。さらに、北朝鮮金正日政権が国内改革により軟着陸を実現し得るとの見方を否定し、政権崩壊の結果、実質的に中国に吸収される可能性に言及した。
 その根拠としてプリチャード氏は、北朝鮮が現在、中国に燃料などを依存しており「吸収は、きわめて自然に行われるだろう」との見方を示した。
 また、記者会見でプリチャード氏は、南北統一問題について「統一の出発点は金正日総書記の退陣であり、退陣後は現在とは異なる体制が北朝鮮にできるはずだ」などと述べた。
 一期目のブッシュ政権で対北朝鮮政策の担当者だっただけに、プリチャード氏の発言は注目を集めたが、対北配慮、対北協力路線の与党側は渋い顔だ。一方、プリチャード氏があえて崩壊論を展開したのは、「(具体的な兆候など)根拠があるのでは」「意図的なのか」などの推測も広がった。
 開城工業団地事業で韓国政府は、支援の一環として、開城地区に二万トンの練炭を供給する計画だったが、今月十日北朝鮮側が事実上、これを拒否。十一日に予定されていた開城工団病院の開院式も実現せず、通信供給に関する交渉も延期されている。「一時的に状況を悪化させたうえで、さらに要求を高める北朝鮮方式だ」(北朝鮮専門家)との見方もあるが、韓国側は困惑の度を深めている。
産経新聞) - 1月17日2時52分更新