国連総長、人事方針 「反米」を更迭 苦肉…米に配慮

 【ニューヨーク=長戸雅子】国連のアナン事務総長が国連高官の人事刷新に乗り出している。第一期ブッシュ政権で農務長官を務めたアン・ベネマン氏が国連児童基金(UNICEF、ユニセフ)のトップに任命されたばかりだが、ほかにも「反米的」とされる高官の異動が取りざたされており、対米関係改善をねらった人事との見方がもっぱらだ。
 アナン事務総長は十八日、今年五月に任期満了を迎えるユニセフのベラミー事務局長(米国)の後任に、ブッシュ政権が推していたベネマン前米農務長官を迎えることを発表。事務総長は会見で、過去にも共和党の政府高官経験者を事務次長として国連に迎えたケースを挙げて“特別な意図”はないことを強調したが、「ワシントンとの関係や連絡は有益なものになるだろう」との期待感も表明した。
 アナン事務総長はさらに、辞意を表明している高官が複数いることも指摘し、「組織全体を見直す機会と考えている」と大幅な人事刷新を予告した。国連筋によると、旧フセイン政権時代の「石油・食糧交換プログラム」不正疑惑に関する独立調査委員会の中間報告発表後に新人事が発表されるという。
 なかでも去就が注目されているのは、「反米」の筆頭格とされているプレンダーガスト政治局長(事務次長、英国)で、中東問題特使のポストが予測されている。
 プレンダーガスト局長は、昨年辞任を表明したイクバル・リザ前官房長(パキスタン)とともにイラクへの国連要員派遣に消極的だったとされている。
 アナン事務総長はすでに、リザ氏の後任として、国連開発計画(UNDP)総裁で米国からの評価も高いマロックブラウン氏(英国)を任命している。
 米国への配慮が濃厚にうかがえる人事の背景には、アナン事務総長を支援する米民主党系の外交専門家らによるアドバイスがあったとされるが、ブッシュ政権との関係がギクシャクしていたアナン氏にとって“苦肉の人事”といえそうだ。
 国連のアドバイザーを務めたエドワード・ラック米コロンビア大教授(国際政治)は、「国連の事務局ではほとんどの職員が、米国の方が国連に歩み寄るべきだと考えているだろうが、それではバランスを欠く。互いの存在を必要としているなら双方が歩み寄るべきだ。少なくとも米国の現政権の政策に通じている人物が事務局にいるほうが国連の活動には有益だ」と指摘した。
産経新聞) - 1月23日2時33分更新