イラク・スンニ派、憲法起草に参加 駐留軍の撤退メド条件

 【アンマン=黒沢潤】イラクイスラムスンニ派法学者グループ「イラクムスリムウラマー協会」の代表は五日、バグダッドで国連のカジ事務総長特別代表と会談し、先月三十日に投票された国民議会選挙を受けて発足する移行政府がイラク駐留外国軍撤退の日程にめどをつけることを条件に、新憲法の起草作業に参加する方針を明らかにした。多くのスンニ派勢力が選挙をボイコットしたが、これとは別にスンニ派各政党も五日、原則的に憲法起草に加わるとの前向きな姿勢を打ち出した。
 国民議会選を受けて成立する移行政府の安定を占ううえで、米軍やイラク治安部隊などへの激しいテロや攻撃の温床となっているスンニ派勢力の政治参加実現は大きなカギの一つとなっている。
 カジ特別代表との協議終了後、ウラマー協会のスポークスマンは「焦点はイラクの全政治勢力が外国軍の撤退について合意することだ」と強調、合意が達成されれば「抵抗勢力」に停戦を呼びかける意向も示した。
 一方、スンニ派の穏健世俗主義政治家、パチャチ元外相(独立民主同盟代表)は五日、選挙をボイコットした政党など招いて政治参加の可能性を協議し、新憲法の起草作業に原則として参加することで合意した。AP通信などによると、合意したのは、アラブ社会主義運動やイラク救済党など十数組織で、すでに憲法起草作業への協力を表明したイスラム党と足並みをそろえた。
 スンニ派組織の政治参加姿勢が徐々に明らかになる中、移行政府樹立後のポスト争いも激しさを増してきた。
 クルド人勢力の連合会派「クルド同盟」を構成する「クルド愛国同盟」(PUK)のタラバニ議長は三日、移行政府で首相か大統領のポストを要求すると表明した。
 一方、議会選で第一党となることが確実なシーア派連合会派「統一イラク同盟」の中心組織、イラクイスラム革命最高評議会の幹部は五日、「シーア派は首相ポストを要求する。決して諦めない」と語り、同じシーア派でも世俗主義の「連合会派イラク」を率い、首相続投に意欲を燃やすアラウィ首相を牽制(けんせい)した。
 現在の暫定政府は、大統領がスンニ派、首相と副大統領はシーア派、もう一人の副大統領はクルド人で分担。ヤワル大統領やジャファリ副大統領(シーア派)はすでに、移行政府の主要ポスト配分を現行のまま維持したいとしている。
 しかし、十日にも発表される開票結果で、クルド同盟が第二勢力に躍進して発言力を強めれば、移行政府の構成をめぐりキャスチングボートを握ることになり、さまざまな思惑が交錯するなか、ポスト配分をめぐる調整は難航しそうだ。
産経新聞) - 2月7日2時42分更新