レバノン ヒズボラ 武装解除拒否 シリア軍撤退後の難問 (毎日 3月18日 朝刊):神浦サイト

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[概要]レバノンイスラムシーア派民兵組織「ヒズボラ」のナスララ党首は、米の武装解除要求を拒否する考えを示した。ヒズボラはシリア、イランの支援を受けた武装組織で、00年にレバノン南部に駐留していたイスラエル軍を撤退に追い込み、現在もレバノン領内の一部(シャバア農場)をイスラエルが占領していると闘争を継続している。一方、アメリカはヒズボラをテロ組織に指定し、レバノン内戦(75〜90年)の終結を決めたタイフ合意(89年)や、国連安保理決議はレバノン各派の武装解除を要求しているとして、ヒズボラ武装解除の圧力を強めている。しかしヒズボライスラエル闘争の成功でレバノン内では人気が高く、レバノン政府は今後、国内外から突き上げを受け、苦しい立場に立たされそうだ。

 ただしレバノン内のシリア軍撤退は第1段階を終え、首都ベイルートからシリア兵はいなくなった。ベカー高原に撤退したシリア軍は、第2段階としてベカー高原からシリアに撤退させることになっている。

[コメント]ヒズボラが簡単に武装解除しないことはアメリカも計算している。逆にアメリカがレバノンに軍事拠点を築くなら、その軍事進攻する理由にヒズボラ武装解除を掲げる可能性が高い。むろんそれには国連安保理決議が錦の御旗となるだろう。もしヒズボラ武装解除アメリカが行えば、あまりにも露骨な米軍事介入を印象付けることになるなら、ヒズボラ武装解除をフランスにやらすことも可能だ。フランスやドイツがアメリカのイラク侵攻に反対したのは、アメリカの好戦的な政策を嫌ったからではない。あくまで自国の国益アメリカに奪われることを嫌ったからである。もしフランスがレバノンに軍事拠点を築くチャンスを与えられれば、フランスは喜んでヒズボラ武装解除に乗り込んでくる。

 アメリカが最も欲しいのは、イラク情勢を逆転できる「地中海沿岸からイラクへの輸送路の確保」なのである。そのためならレバノンをフランスに委ねることも許すだろう。

 その次はシリアである。シリアは周囲を親米的な国に囲まれ、アサド大統領の政治力は急速に低下する。いくらアサド大統領がイランやサウジに泣きついても、クーデターなり騒乱で政権を追われる日は遠くない。そのようなアメリカの戦略を考えると、武装解除しないヒズボラは絶好の獲物なのである。

 戦争をテーマにする国際ジャーナリストは、そろそろベイルートに拠点を移すことを考える時が来たようだ。近い将来、シリアのビザをとって、ベイルートからシリアを抜け、イラク国境に至る道を走破することをお勧めする。アメリカのネオコンにとって、喉から手が出るほど欲しい道である。

 中国にとって、東南アジアに進出するメコン川ルートにも匹敵する最重要な戦略路である。