「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」

平成17年(2005年)4月20日(水曜日) 
通巻第1096号 
”チャイナ特需”は確実に終わった
 東京株式市場では中国関連企業の全面安が続いている

 所謂「チャイナ・リスク」が表面化して以来、世界の投資家の心理はすでに「中国からの撤退」を決め込んだかのようである。

 日経平均株価は18日に前週末比で441円50銭安。
 市場の解説では「米国株式の大幅続落、反日デモ拡大に伴う日中関係の悪化などで投資家の心理が冷え込んだため」となる。

 実態は中国の反日運動への嫌気である。
 とくに下落銘柄を見るとNEC、シャープ、ソニー、TDK、京セラ、キヤノン、日立、富士通、松下電産およびアドバンテストロームなど半導体関連株が下げた。
 これらはすべて中国に大工場をもつ企業ばかりだ。

 大々的な中国進出をはたしたトヨタ、ホンダ、日産など自動車関連株も年初来安値を更新した。反日デモの隊列から「日本車を壊せ、この売り上げが日本の戦車購入資金となる」などと訳の分からないアジが飛んだからだ。
 実際に北京、上海、広州、深センなどでは通行中の日本車が何台も襲撃をうけた。この被害の続出は先行きの暗さを暗示した。
 都会での日本車の売れ行きは減少する懼れが強いだろう。

 このほか鉄鋼のハイテク工場を中国に建てるJFE、新日鐵にくわえて住金、神戸鋼など鉄鋼株なども、これまでのチャイナ特需が止まる、と判断されてウリ一色になった。
 
悪い噂は想像の連鎖を生む。
 中国へ物資を運び、中国からの輸出であたった海運企業(郵船、商船三井川崎汽船など)の株式も下落した。

 中国との通商拡大の旗振りだったのは商社だが、ビジネス金融の元締めでもある「総合商社」株は、住友商、三井物、三菱商、伊藤忠、丸紅が安値圏に並び、あまつさえ中国へ人とハイテク貨物を運ぶ航空関連株までずるりと下落。
 とくに中国へのツアー・キャンセル、渡航者減少によりJAL、ANAが年初来安値を付け近畿日本ツーリスト軟調な展開となった。

 金融でもチャイナ特需ブームに便乗して融資やクレジットカード、人民元の取り扱いに挑んだ三菱東京UFJ、三井住友、みずほ、りそなホールディングスなどの大手銀行株が新安値に沈んだ。
 銀行証券保険は当然下落するが、これまでの中国特需歳代の受益者は建設・建機である。これらの銘柄は「がっくり安」の様相を呈した。

 江蘇省南通に2000億円を投じて大型洋紙工場を建てる王子製紙の株価などは「墜落」模様。
 小松製作所も年初来20%も下げている。
嘗ては中国様々、いまは中国怨み節ですかね?
 
かくて中国特需が終わった。