江沢民の「文革再現」の夢、ついえる


4月20日号(No.320)で、「文化大革命を彷彿とさせる権力闘争が中国で進行
中」との一文をものしたが、どうやら、この江沢民vs胡錦涛の対決は後者が
制したようである。それは以下の記事を読めば一目瞭然。

*中国が反日デモ禁止 関係改善に本腰(東京新聞4月20日

 【北京=白石徹】中国中央テレビによると、中国共産党中央宣伝部
十九日、北京の人民大会堂に約三千五百人の関係者を集め、「中日関係の
情勢報告会」を開いた。李肇星(り・ちょうせい)外相も出席した報告会
では、中日関係の重要性が強調され、国民に無許可デモなどに参加しない
よう呼びかけた。中国政府と党が全国に向け「反日デモ禁止」を明確に
伝えたのは初めてで、中国が日中関係の改善に本格的に乗り出したものと
して注目される。

 李外相は報告会の中でまず「中日は二千年にわたる長い間、友好的な
交流を続けてきた。一九七二年の国交正常化以来、政治、経済、民間交流
など各方面で大きな進展があった」と発言。その上で「近年は日本の対中
政策に新たな動きがあり、中日関係を複雑にさせている」との認識を示し、
日本の歴史問題と台湾問題に言及した。また李外相は「中日関係を適切に
処理する重要性を十分に認識しなければならない。党と政府が、国家の
根本利益から出発し、対日関係のさまざまな問題を処理することを信じて
ほしい」と参加者に訴えた。

 さらに同外相は国民に向け(1)無許可のデモに参加してはならない
(2)社会の安定に影響を与えるようなことをしてはならない(3)愛国
の情熱を職場や勉学の場で示してほしい−などと明確に指示し、中国政府
が今後、反日デモを断固として取り締まる方針を示した。

 四月に入って毎週末、大規模な反日デモが続いてきたが、党宣伝部の
方針を受けてデモは収束に向かう可能性が高くなった。また、党と政府が
日中関係改善に取り組む姿勢を明確にしたことで、近く日中首脳会談が
実現するとみられる。

 共産党宣伝部は党の政策や方針、イデオロギーを宣伝、教育する組織
で、その報告会は大きな意味を持つ。報告会には党と政府、人民解放軍
幹部のほか、学生やメディア関係者も参加した。

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ここで重要なのは「報告会には党と政府、人民解放軍の幹部も参加」と
あること。

江沢民は、毛沢東文化大革命を仕掛けて復権した過去を再現させよう
と、軍と警察への影響力を背景に、インターネットを利用して若者を挑
発。彼らを「紅衛兵」に仕立てて復権を図ったのであるが、40年前と現在
では中国の置かれた立場が違い、官製デモのような無法を世界が容認する
はずがなく、このまま乱暴狼藉をやっているとオリンピックも万博も危う
い。

更に、過去3週間にわたって中国を席巻した反日デモによってこれまでの
日中間の「政冷経熱」が「政冷経冷」に向かうことが明らかになり、日中
の経済交流が阻害されたら中国がアウトであることが見えてきた結果、
その現実認識が中国指導層に浸透し、人民解放軍までもが「中日関係の
情勢報告会」に出席した(=胡錦涛に傾いた)。そういうことなのです。

すなわち、江沢民は、毛沢東の「造反有理」にならった「愛国無罪」に
よる権力闘争に敗れた。

換言すれば、胡錦涛政権は江沢民の圧力による我が国との対決から共存
共栄に舵を切ったわけで、ここは「歴史問題」を始めとする諸懸案を解決
する好機。小泉首相靖国参拝中止を落としどころに、尖閣諸島の領有権
やら、東シナ海での資源開発問題、更には、中国における不当な反日愛国
教育の是正など、思い切った中国側の譲歩を求めうる立場に立ったという
ことです。

これまでは日中関係を阻害する最大の障害と思われた首相の靖国参拝では
あるけれど、それが故に、日中間の諸懸案解決のための最強の切り札に
なるのだから、皮肉なものである。

ただし、日中関係が当面、修復されたとしても、中国指導部の腐敗と経済
のひずみが拡大するにつれて中国政府は国内の不満を抑えきれなくなり、
ガス抜きの手段として我が国の歴史問題は再度浮上する。アメリカは中東
やロシア地域の民主化に注ぐのと同じくらいの情熱を中国の民主化にも
注いで欲しいものである。中国が民主化しないと、13億の不満はいびつな
形で我が国に向かって噴出することになる。必ずそうなる。

    Kenzo Yamaoka