ウズベク市民に銃口、徹底鎮圧 中央アジア火薬庫に火(ASAHI)

2005年05月14日23時41分

 中央アジアウズベキスタン東部のアンディジャンで起きた反政府暴動が武力で鎮圧された事件で14日、政府の強硬手段によって多数の市民が犠牲になったことが分かり、同国情勢は一気に不安定化し始めた。治安部隊による市民への残虐行為が伝えられ、住民らは抗議集会を再開した。旧ソ連圏で相次ぐ反政府運動が、イスラム復興問題を抱える中央アジアの火薬庫に火をつけた形だ。

 カリモフ大統領は14日夕に記者会見を開き、13日の衝突で「治安部隊に10人、武装勢力側にそれ以上の死者」が出たと述べた。市民の死者については言及しなかった。

 しかし、現地からは治安部隊の残虐行為を伝える報道が相次いだ。

 現地通信社「フェルガナ・ル」は、13日の衝突で庁舎周辺に集まった群衆に対して治安部隊が軍用車から機関銃で発砲、兵士たちは倒れた女性や子供らにとどめを刺して歩いた、と伝えた。近くの映画館でも約1500人の市民に装甲車の治安部隊が発砲、数十人が死亡したという。

 地元の人権活動家ザイナビドジノフ氏はインタファクス通信に、死者は数百人にのぼると述べた。

 アンディジャン中心部では14日、再び数千人が行政府庁舎前に集まり、抗議の声を上げた。数十キロ離れたキルギス国境の町イリイチェフスクでも約500人がデモ。「フェルガナ・ル」によると、警察車両を焼いたり、警官を襲ったりした。キルギス側の住民も越境して参加している、という。混乱が周辺国に広がるおそれも出てきた。

 キルギス政府当局によると、528人がウズベク側からキルギスへ避難した。難民の証言によると、フェルガナ盆地の他の都市にも反政府運動が広がりつつあるという。

 カリモフ大統領は記者会見で、反政府暴動はイスラム過激組織「ヒズブ・タフリル(解放党)」の流れをくむ「アクラミヤ」メンバーによって引き起こされた、と強調。占拠された行政庁舎の前に集まった市民約300人について「武装勢力に呼び出された親類らが自ら盾になった」とし、犠牲者を武装勢力の一部と見なす考えを示した。

 〈フェルガナ盆地〉 ウズベキスタン東部で、キルギスタジキスタンにまたがる人口密集地。多くの民族が入り乱れ、イスラム復興運動が活発。拠点都市のアンディジャンは、ロシア帝政時代の19世紀末に2千人のイスラム教徒がロシア軍の兵営を襲った事件で知られる。