EU憲法の発効、先送り濃厚 首脳会議で浮上(ASAHI)

2005年06月17日07時01分

 16日にブリュッセルで始まった欧州連合(EU)首脳会議で、批准作業が難航しているEU憲法条約について、06年11月としている発効目標を事実上先送りする方向が一層鮮明になってきた。中期財政計画(EU予算、07〜13年)に関しては、焦点になっている英国への「予算払戻金(リベート)」を一定水準で抑えることで妥協を模索している。

 EUは、会議を通じて憲法条約をめぐって露呈した亀裂を修復し、結束を強調する場にしたい考えだ。EU議長国ルクセンブルクのシュミット外務副大臣は15日、欧州議会で「議長国としてめざすのは憲法を守ることだ。そのためには時間が必要だ」と述べた。

 憲法の条文には「06年11月1日に発効する」と記されているが、副大臣は「政治的意味で書かれたもので、法的拘束力はない」との見解を示した。「それができなければ、最後の批准書が寄託されてから2カ月後に発効」との規定もあることを指した発言だ。

 欧州委員会バローゾ委員長も15日、「熟慮のための時間」が必要なことを改めて強調した。

 憲法条約を国民投票で否決したフランスは、07年に大統領選挙がある。EU内には、仏の新体制が発足すれば、再投票などによる批准は可能だとして、07年以降の発効をめざす考えが浮上している。

 関係者によると、首脳会議は「批准作業を続行する」との内容の宣言を出すが、各国が独自の判断で国民投票や議会による批准を先送りできるようにする案が検討されている。デンマークポーランドアイルランドなどが国民投票の延期に踏み切る可能性がある。

 一方、EU予算をめぐっては、議長国ルクセンブルクが15日夜、英国だけに認められ、予算規模に連動して増えるリベートを07年以降はEUの東方拡大前の水準に抑える案を各国に示した。

 具体的には04年の約46億ユーロ(約6100億円)を、97〜03年の平均水準に抑制し、固定する。リベート額を抑えることで、07年に予定されているルーマニアブルガリアの新規加盟などによって予算規模が膨らむのを抑えられる。

 だが英国は、「農業大国」のフランスが恩恵を得ている農業補助金の削減を求めており、仏はこれに強く反発している。オランダやスウェーデンも一層の負担軽減を求めている。