不良債権処理の出口は見えた -小泉内閣最大の功績- 【南日本新聞】

http://373news.com/2000syasetu/2005/sya050527.htm

【大手銀行決算】
 大手銀行7グループのことし3月期決算が出そろった。経営健全化のハードルとされた不良債権の半減目標をそろって達成した。

 金融庁が課した不良債権処理の目標は2002年水準の比率8.4%を半減させることだった。それが2.9%まで下がり、ピーク時に7兆7000億円あった不良債権残高はほぼ4分の1に縮小した。

 削減目標を達成した大手銀行は、バブル崩壊による負の遺産の処理がようやく終わり、10年に及ぶ呪縛から解かれたといえる。来年3月期には全グループが黒字決算を見込んでおり、経営が健全化の軌道に乗るのは間違いなさそうだ。

 「失われた10年」といわれる1990年代、日本経済を沈滞させた最大の原因は、銀行がすべてのエネルギーを不良債権処理に吸い取られてしまったことだ。

 こうした諸悪の根源の不良債権問題と決別するのに加えて、注入を受けた総額8兆円の公的資金の返済の見通しも立ってきた。前向きの投資ができる環境が整えば、銀行が再び日本経済をけん引する期待も膨らむというものだ。

 しかし、過去の負債と決別し、長いトンネルを脱したといっても、銀行の本業である業務純益が増えたわけではない。なお減少に歯止めがかからないのは、金利競争が激化する中で預金と貸し出しの利ざやに依存するこれまでの銀行経営が限界にきていることの表れでもある。

 そのため大手銀行は利ざや依存体質を改め、リテール(個人取引)による手数料収入や、中小企業との取引を拡大することで収益力を上げようとしている。

 大企業に向いていた頭を切り替え、個人や中小企業を取り込もうという狙いだろうが、資産運用や年金、保険、クレジットなど個人向け金融サービスのノウハウが欧米並みに充実していないのだから容易にはいくまい。

 しかも銀行、証券、保険、消費者金融などそれぞれ業態ごとの縦割り法制になっていることも、顧客が望む金融商品を提供できない原因の一つになっている。異なる業態の垣根を取り払い、幅広い金融サービスを手掛ける必要がある。

 銀行が巨額の公的資金の注入と超低金利政策に支えられ、危機を脱したのは言うまでもない。こうした安全網を当てにした無責任な経営はもう許されない。

 これからの大競争時代を生き残るには他業態との連携や金融コングロマリット(複合企業体)の道を模索する努力が欠かせない。何よりも利用者に目を向けたサービスの提供を忘れないでほしい。