アメリカのイラク脱出作戦 大統領副補佐官が明かす

 イラクに駐留する米占領軍の撤退が囁かれる中、その撤退戦略の具体的な内
容の一部が明らかになった。27日付のクウェート紙アルラアイ・アルアーム
のイサーム・ファイヒム記者がバグダードから伝えた。

 数週間前からイラクに滞在しているブラックウィル国家安全保障副補佐官
(ライス女史の部下でキーマンである)と会ったイラクの複数の政治情報筋が
伝えたところによると、ウィールは「イラクに駐留する米軍を削減する計画が
ある」と確言した。

「この計画は米大統領選の結果に左右されない。ブッシュも彼のライバルの
ジョン・ケリー候補もイラク脱出戦略の点では意見が一致している」

 「ケりー候補のイラク問題の解決計画では、ブッシュの計画と同様の幾つか
の基本項目が決められている。すなわち、国際機関(国連)の支援と、イラク
安軍の訓練の必要性、イラク人に安寧をもたらすイラク復興の遵守、来年の選
挙実施に傾注、イラク軍に日常の治安責任を委任することである。

 「来年1月に実施が決まっているイラクの総選挙は、(米軍が)撤退する口
実に利用されるだろう。ブッシュ当局は、180億ドルの復興資金の一部をを
治安維持に廻し始めたが、このことは脱出戦略の開始を意味する。米国とシリ
アの(イラクとの)国境警備協力(合同パトロールの実施)に関するこのような
秘密協議は、米国の関与の元にイラクと政治的・安全保障協定を結ぶことで隣
接諸国にも拡大するだろう。これらの協定は脱出戦略を早める一環の第一歩と
見なされる」

 同情報筋は10月にエジプトの首都カイロかサウジアラビアの首都リヤド
で、マレーシア、チュニジアアラブ首長国連邦、国連に加え、8大国と中
国、欧州連合(EU)、イラク隣接諸国が参加する国際会議が開催される可能
性があると語った。この会議の目的は、復興に必要な資金を(参加国に)割り
当て、来年の選挙実施を含む政治活動への支援をより多く確保することであ
る。

 それよりも重要な目的は、イラクが隣接諸国と安全保障に関する政治協定を
締結するために、幅広く国際機関による正当性を与えることだ。それらによ
り、脱出戦略の為の基本的で力強い条件が満たされることになる。

 ウィールや米軍の現場指揮官たちやイラクに居る米外交官たちからの情報に
基づき、同筋が引き出した結論は次のようなものだ。

 米国防長官ドナルド・ラムズフェルドは、「選挙の治安確保のために増派す
る必要があるかもしれない」と発表した翌日に、アラウィ首相と会見し、その
直後に「イラクからの米軍撤退が近い」旨の発表をするつもりでいた。

 ところがラムズフェルドの顧問たちが、「イラクへの増派の可能性に触れた
長官の発言はイラク駐留軍に悪い反応をもたらし、うまく治めないと良くない
波紋を広げることになる」と警告した。この警告を聞いた直後に急遽ラムズ
フェルドは、米軍の早期撤退に関する発言をしたのだ。

 数週間前ラムズフェルドは、米軍の士気が低下しているとの報告を受けてい
た。またイラク駐留の予備役部隊の司令官から「米軍は抵抗勢力の猛烈な圧力
に晒されており、兵士を(戦場に)留まらせるための対応に追われる有様だ」
とする報告書を受けていた。複数の現地からの報告書は、「1日の平均襲撃数
が80回に増加し、9月の3週間だけで59人の兵士が殺害された後には、米
軍には挫折感と絶望感が蔓延している」ことを示している。ラムズフェルド
以前「イラクには安全な場所は何処に無い」とする予備軍部隊の司令官の報告
書も読んでいる。

 予備役と、正規軍を支援するため国家防衛隊の再召集の可能性に関する報告
書が憂慮を引き起こした。補給用車両の運転など軍の業務は、増大する抵抗勢
力の襲撃により困難な任務となった。米軍、中でも予備役部隊は、極めて困難
な事態に直面している。
 
 ラムズフェルドはまた、ペンタゴンが任命した外部の専門家から成る委員会
が作成した調査報告書を受け取っている。この報告書は記す。「軍の機関はも
はや、治安の安定とイラクアフガニスタンでの紛争解決を目的とする現在の
作戦遂行に十分な戦力を保持していない」

http://www.alraialaam.com/27-09-2004/ie5/international.htm#04

 親米国クウェートの新聞の報道だけに信憑性が高い。増派と撤兵というラム
ズフェルドの合い矛盾した発言の深層が良く理解できる。

 現場の兵隊の士気が無くなれば戦争は終わりである。問題は抵抗勢力が、こ
のような米国の戦略を呑むか否かである。勝利を確信して意気が上がる抵抗勢
力は。当分の間あくまでも、限りなく無条件に近い降伏を求めて攻勢を強める
であろう。どの段階で合意に到達できるか、賠償金の支払いなど戦後処理の方
法が、今後の焦点になってきたようだ。

 抵抗勢力は当然この記事を読んでいる。

アラブの声ML 齊藤力二朗
http://groups.yahoo.co.jp/group/voiceofarab/