曽我 純の週刊マーケットレター 

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 FRBの景気判断歪む
 米国の実質経済成長率は01年7−9月期の前年比0.4%減を底に回復し、04年4−6月期まで10四半期連続のプラスだ。04年1−3月期は5.0%増と84年10-12月期以来の高成長となり、4−6月期も4.7%増加し依然高い成長を維持している。だが、過去の成長パターンから判断してもこのような高成長が持続するとは考えられず、今後、減速傾向を強めることは間違いなく、今年10-12月期は3%程度の成長に鈍化するであろう。
 FRBは21日開催のFOMC連邦公開市場委員会) でFFレートを0.25%引き上げ年1.75%としたが、債券相場は上昇し、22日の利回りは4月1日以来の4.0%割れとなった。債券利回りの低下よりも期待収益率低下の影響力が大きく株式相場は下落した。外人の日本株買いの衰えから対ドルで円は弱含み、米独の長期金利差の縮小からユーロは上昇した。
 FRBの経済見通しによれば、今年10-12月期の実質GDPは4.5-4.75%伸びるようだが、相当甘い見通しと言わざるをえない。今回の約20年ぶりの高成長は自律的回復ではなく、政策によって引き上げられた成長であるため、政策の出尽くしによる反動が大きくでるであろう。03年前半は前年比2.0%台に低下していたが、減税により急速に成長率は上昇したのである。減税効果が出尽くしになれば、成長率が低下するのは目に見えており、特に、消費ウエイトの大きい米国経済ではその影響は顕著にでる。
 FOMCの声明文によると、FRBは景気の先行きを楽観的にみているが、消費や生産指標はいずれも景気のピークアウトを示唆している。大統領選挙を控え、FRBの景気判断の歪みが明らかになってきた。FRBへの信認の揺らぎが、債券高、株安という形で景気の不透明感を際立たせることになり、大統領選挙にも影響しそうである。