シラクの挑戦状(400字で斬る国際情勢ニュース)

辞任するパウエル米国務長官の後継としてライス大統領補佐官(国家安全保
障担当)が11月16日、ブッシュ大統領により指名された。ライス氏の国務
長官としての最大の課題の1つが、米仏関係の修復である。が、シラク仏大統
領は「世界は安全になっていない」とにべもない。

 英BBCは17日、英国を国賓として公式訪問するシラク大統領とのインタ
ビュー番組を報道。その中で同大統領は、フセイン政権を打倒したイラク戦争
は、「世界をより危険にした」と改めて断言。ブッシュ大統領率いる米国に対
し、旧大陸の盟主としてあくまで立ちふさがる考えを示した。

 シラク大統領は、「世界がより安全になったとは思えない」としブッシュ大
統領の持論である「(イラク戦争で)世界は安全になった」という認識に真っ
向から反論。その理由として「テロリズムが増加の一途をたどっていることは
疑いようもない」とし、イスラム原理主義を掲げるテロが、イラク戦争の結果
、世界に拡散したとの考えを強調した。

 シラク大統領は11月18日にロンドン入りし、英国のブレア首相、エリザ
ベス女王、英経済界要人と会談。なかでも、「ブッシュのプードル」と揶揄さ
れたブレア首相との会談では、米仏関係修復の仲立ちとなりたい同首相に対し
、「旧欧州」の立役者としてシラク大統領が断固突っぱねるのか、それとも前
向きの姿勢を示すのか注目される。

 シラク大統領は、「サダム・フセインを追い払ったということに関してはあ
る種の前向きな要素がうかがえるが、半面、それがイスラム圏の国々の男女を
刺激し、世界をより危険なものにした」と断言。ブレア首相に対しては、イラ
ク戦争開戦前に、中東和平にこそ努力を傾注すべきだと説得したとされる。

 シラク大統領は、政治哲学、世界観を重視する欧州諸指導者に共通して持っ
ているブッシュ蔑視をいわば体現している。冷笑と言ってもいいだろう。他方
ブッシュ政権には「欧州恐るるに足らず」の声が響き渡っている。ブッシュ
大統領には3期目はない。欧州との亀裂を修復しない限り、歴史に残る米大統
領とはなれない。(了)