郵政公社 新事業への参入頓挫 収益先細りに危機感(ASAHI)

2005年08月09日02時02分

 郵政民営化法案の否決で、日本郵政公社がめざす国際物流など新規業務への参入は当面、道が閉ざされた。公社法の規定では手がけられる業務の範囲に限界があり、民業圧迫との批判もつきまとう。郵便、貯金、保険の3事業の規模が次第に縮小するなか、窮屈な経営を迫られそうだ。

 生田正治総裁は8日夕、記者団に「公社のままでも、まだまだ改善の余地がある」と経営努力を続ける姿勢を強調したが、「郵便局網の維持がだんだん重荷になる」と危機感もにじませた。

 法案否決で、公社が準備中の一大事業が封印された。欧州の国際物流大手「TPG」との物流合弁会社の計画で、民営化後に現行法で参入できない国際物流の事業進出が認められるため、前倒しで準備を進めていた。

 すでに公社幹部が何度もオランダのTPG本社を訪れ、「あとは調印だけ」(公社幹部)だった。民営化法案の否決で収益源探しは頓挫し、経営に影を落とす。

 公社移行後の決算は03年度2兆3000億円、04年度1兆2000億円と当期黒字で推移しているが、内実は厳しい。約5200億円の債務超過を抱える郵便事業は、電子メールの普及などで苦戦し、はがきなど通常郵便の売り上げは年に5〜6%ずつ減少する。それを堅調な郵便小包などで補い、全体で約2%の落ち込みに食い止めている。

 黒字の大部分を稼ぐ郵便貯金も、過去に旧大蔵省資金運用部に預けた預託金利息頼りなのが実情で、先細りは確実だ。民営化の頓挫で、リスク資産へ運用を広げる道が断たれれば、国債中心の運用を続けざるを得ず、収益向上の展望は開けない。簡易保険(簡保)も公社のままでは、競合する民間並みに商品群を用意することは難しい。

 生田総裁は国会で、公社のままなら、経営悪化のしわ寄せが利用者に回る可能性を示唆し、「公社が生き延びる選択肢は、公社法に民間並みの経営の自由度を与えてもらうか、難しいなら早期の民営化で完全に自由に経営をさせてもらうことだ」と何度も訴えた。

 現実には公社法改正は難しく、現行法の枠内で新規事業を模索することになるが、どこまで経営改善につながるかは不透明だ。